「103万円の壁」の引き上げに関して、自民・公明・国民民主党の間で合意されましたが、具体的な引き上げ幅は現在のところ決まっていません。
国民民主党は178万円までの引き上げを主張しており、これが実現すれば手取り額の大幅な増加が見込まれると試算されています。
一方で、与党側はこの額に対して慎重な姿勢を示しており、年末の税制改正議論で妥協点が探られる見込みです。
引き上げ幅に関しては、130万円や150万円といった中間案も浮上しており、これにより働く人の手取り額が段階的に増加する可能性も示唆されています。
実現に向けた進展は、今後の与党と国民民主党の交渉に左右されるため、最終決定は年末に行われる税制改正議論の結果次第となります。
税制改正議論とは?
税制改正議論とは、政府が毎年行う税制に関する見直しや変更についての議論を指します。これにより、税金の仕組みを現状に適応させ、経済政策の実現を目指します。
主に以下のようなプロセスを経て進行します:
主な内容
1. 各党の提案・要求
各政党が税制に関する政策課題を提起します。
たとえば、103万円の壁引き上げや所得控除の見直しなどが含まれます。
2. 財務省の検討
財務省が各提案の財政影響や実現可能性を精査し、具体的な施策案を策定します。
3. 与党税制調査会での議論
自民党や公明党など与党が中心となり、具体案の調整を行います。
野党や国民の意見も参考にされる場合があります。
4. 閣議決定
年末までに政府の公式方針として決定され、次年度の予算案とともに国会で審議されます。
5. 国会での法案審議
税制改正を盛り込んだ法案が国会で議論され、成立すれば次年度から適用されます。
2024年の焦点
2024年の税制改正議論では、「103万円の壁」の見直しや、企業向け税制優遇措置の拡充、新しい環境税の導入などが議題に挙がっています。
これらの議論は、国の税収確保と国民の負担軽減のバランスを取りつつ、日本経済の活性化を目指す重要な機会です。
いつやるの?
税制改正議論は通常、年末に向けて本格化します。具体的な流れは以下の通りです:
1. 11月~12月初旬
各政党や省庁が税制改正に関する要求を取りまとめ、財務省が初期検討を行います。
2. 12月中旬
与党(自民党・公明党)の税制調査会で詳細な議論が行われ、改正案がほぼ固まります。
3. 12月下旬(年末)
政府が「税制改正大綱」を発表します。これが次年度の税制改正の基本方針となり、その後、法案が準備され国会に提出されます。
したがって、税制改正の具体的な内容が明らかになるのは12月下旬頃が一般的です。
税制改正大綱 発表日は?
令和7年度(2024年度)の税制改正大綱の発表は、例年通り12月中旬に行われる予定です。
これまでの傾向から考えると、12月中旬の与党会議で正式決定される見込みです。
今年も12月14日頃が有力な日とされています。
税制改正大綱には、所得税や法人税、消費税など主要な税制の改正案が含まれるため、具体的な内容や影響が注目されています。
国民民主党の政策と重要なポイント
国民民主党の2024年度税制改正案について、さらに深掘りしていきます。以下の各政策を実現するための背景や具体的な数字、実行の可能性について、詳細に分析していきます。
1. 103万円の壁引き上げ(基礎控除引き上げ)
• 提案内容:年収103万円以下の人に適用される「103万円の壁」を引き上げ、178万円に設定するという案です。
これにより、低所得者層や主婦層が所得税を免除される範囲が広がり、就業を促進する狙いがあります。
• 具体的な数字:
• 例えば、年収178万円の場合、所得税の負担が免除されることで、従来よりも大幅に手取りが増加します。
この引き上げは、年収200万円以下の家庭にとっては年間数万~十数万円の負担軽減をもたらす可能性があります。
• さらに、非課税枠が拡大することによって、消費活動を促進し、景気回復にも寄与する効果が期待されます。
• 実現可能性:
• 財源の確保が最大の課題となります。
これを実現するためには、税収の減少をカバーするための他の財源を見つける必要があります。
国民民主党は、税収の減少分を経済成長によって補うことを狙っていますが、経済回復のペースが予測通りに進むかが重要なポイントとなります 。
• また、この政策は働く意欲を高めるため、社会保障費の削減や経済成長の促進に繋がると見込まれるため、一定の支持を受ける可能性があります 。
2. 消費税軽減税率の適用範囲拡大
• 提案内容:現在、消費税の軽減税率は食料品と新聞に適用されていますが、これを生活必需品や日用品にまで広げる提案です。
• 具体的な数字:
• 生活必需品の消費税率が10%から8%に引き下げられると、家庭ごとの負担が年間数千円から数万円規模で減少する可能性があります。特に、低所得者層に対して大きな支援となるでしょう。
• 具体的には、月々の食料品や日用品の消費税が減少することで、家計への直接的な影響を軽減することができます。
• 実現可能性:
• これは消費税を軽減する政策なので、財政的な負担が増えることが懸念されます。そのため、実現には財政健全化の目標との調整が求められます。特に政府が進める財政再建との整合性が問題になります 。
• ただし、低所得層への直接的な支援となるため、特に庶民の支持を集めやすい政策となり、実現の可能性は高いです。
しかし、消費税減税には与党との協議が不可欠であり、財源確保の方法が重要です  。
3. 中小企業支援
• 提案内容:設備投資の促進や研究開発費の税控除を強化することによって、中小企業の成長を後押しする政策です。特に、設備投資に対する税額控除や研究開発費に対する優遇措置を強化することで、企業の競争力向上を図ります。
• 具体的な数字:
• 中小企業が設備投資を行った場合、投資額の30%程度を税額控除として返還する仕組みを提案しています。
これにより、設備投資の意欲が高まり、技術革新や生産性向上を促進します。
• また、研究開発費用に関する控除も強化されるため、企業は新技術開発に積極的に取り組むことが期待されます。
これにより、年間で数十億円規模の支援が見込まれます。
• 実現可能性:
• 中小企業支援は、特に経済成長を狙う政策として有効であり、企業の成長や雇用創出に直結するため、与党との調整が比較的スムーズに進む可能性があります。
ただし、財源確保が求められ、特に税収が減少する場合にどう調整するかが鍵となります 。
4. 法人税改革
• 提案内容:法人税の引き下げを行い、特に中小企業に対する税負担を軽減することで、企業の競争力を高め、雇用の創出を促進します。
• 具体的な数字:
• 法人税を1%~2%引き下げることで、企業には年間数十億円規模の税負担軽減が期待されます。
• さらに、中小企業向けの税控除を強化し、特に設備投資や人材開発に対して優遇措置を取ることで、数百億円規模の支援を見込むことができます。
• 実現可能性:
• 法人税の引き下げは、企業の成長を促すため有効ですが、財政健全化の観点からは、減税策を実施するためには、景気の回復を前提とした他の財源確保策が必要です。
この政策が実現するためには、与党との合意形成や経済の回復が不可欠です 。
5. トリガー条項の凍結解除
• 提案内容:消費税やガソリン税の引き上げを防ぐためのトリガー条項を再発動させ、税負担を軽減します。
• 具体的な数字:
• トリガー条項が発動されると、ガソリン税や消費税の引き上げが自動的に停止され、家庭や企業の負担が軽減されます。この措置により、数百億円規模の税収減が予測されます。
• 実現可能性:
• トリガー条項の再発動には、景気の動向が大きく影響します。特に、インフレや物価上昇が続く状況では、消費者負担の軽減を求める声が高まり、政府の対応として検討される可能性があります。しかし、財政面での影響が大きいため、慎重な議論が必要です  。
結論:実現可能性と根拠
国民民主党の税制改正案は、特に低所得層や中小企業への支援を強化する内容が多く、社会的な公平性を重視しています。
これらの政策は、社会的支持を集めやすいと考えられますが、最大の課題は財源確保です。
税収減を補うために、経済成長や新たな税収源の確保が重要なポイントとなります。
また、これらの政策は、与党との協議や景気回復を前提とするため、政治的な調整が必要不可欠です。